教育改革の幻想 (ちくま新書)
「教育改革の幻想 (ちくま新書)」のレビュー・感想

【「ゆとり」教育の本質を描く】
すでに過去の教育施策として悪評が定着し葬りさられようとしている「ゆとり教育」ですが、その全てがいけなかったのか、どの部分は生かしていける内容なのかなどについて綿密な検討がなされたとは言えません。本書では、詳しいデーターを駆使しながら、「ゆとり教育」の本質を鋭く描き出しています。
著者の指摘する「ゆとり教育」を実現して行くに際してのいちばんの問題は、理念はどれほど素晴らしいものであっても、その実現を「学校の先生たちがちゃんとやってくれるかどうか」と現場に丸投げし、具体的な方法を示すこと...

【子供はもっと不真面目で保守的だという話】
基本的には統計的事実から支配的な言説を批判する本。ここで言われる教育改革とは「ゆとり教育」を指しており、それは具体的には子供中心の教育、主体性を育てる教育、苛酷な受験や勉強から解放された教育を指している。誤解すべきでない事だが、著者はゆとり教育の理念自体に反対しているわけでも、子供なんてガンガン抑圧して管理してやればいいみたいな考え方なわけでも、国益のためにも学力低下は許せないなどと考えているわけでもない。ただ本書は書名的にもその内容的にもそういう考え方の人に十分道具的に利用されうるだろう。...

【論理的で説得力のある良書】
(1) 学力低下論争のあおりを受けて軌道修正を余儀なくされた「ゆとり教育」であるが、そのゆとり教育を2002年1月出版の時点で「教育改革の幻想」と見通した本。
(2) 本書で主張されている主な事項は次のとおり。
○ そもそも、ゆとり教育の前提となっている「過度の受験競争」は存在しない。
○ ゆとり教育によって、家庭での学習時間は減少している。学力の低下もみられる。
○ ゆとり教育は、正しい現状分析を行ったうえで実施されたものではない。
○ 「総合的な学習の時間」のよう...

【ゆとり教育がいかに非合理的な政策であったかを検証、信頼性は高い】
1989年と2001年の全国学力試験データをまとめた調査報告を作成した苅谷剛彦氏の著書。ゆとり教育が推奨された根拠となるデータを紹介し、その解釈が不適切であることによって政策自体が失敗であった可能性を言及している。約200ページではあるが、多数のデータが紹介されたじっくり読むべき書。
内容を見ると、著者の検証データは紹介されていないものも含めると膨大であり、きわめて時間をかけて検証されている。最近の教育論者の書には、主観的な意見が中心のものが多い中、本書は基本的な統計データを素直に解釈した根...
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